2010年12月24日金曜日

⑮黒髪という曲のお話

今回は、「冬」を感じる曲のご紹介です♪

川端康成の『雪国』の文中にも
ヒロイン駒子の
「小さい時こうして習ったわ。」
「く、ろ、かぁ、みぃ、の……。」

という様子が書かれている様に、
習い始めの手ほどきとして使われる曲ですが、
情緒があって美しいので親しまれてきました。




歌詞は以下のようになっております(^.^)

黒髪の むすぼれたる思ひをば
とけて寝た夜の枕こそ
ひとり寝る夜は仇枕
袖はかたしく つまじやいうて
愚痴な をなごの 心は知らず、
しんと更けたる鐘の声
昨夜(ゆうべ)の夢の今朝さめて
ゆかしなつかしやるせなや
積ると知らで 積る白雪


天明4年に「大商蛭小島(おおあきないひるがこじま)」という
中村座の芝居が上演されました。
伊藤祐親(すけちか)の娘辰姫が
頼朝への恋を政子に譲り、自分の髪を梳きながら
嫉妬に胸を焦がす情景のBGMに
この曲を使ってから
曲が親しまれてきました♪

『黒髪』の様に、
もともと地歌ですが、少し変化して長唄や、
小唄でも演奏される様になった曲は
他にもいくつかあります。

2010年12月21日火曜日

⑭新浮船 という曲のお話

『新浮船』という曲のお話です。

「新」とついておりますのは、この曲が作曲される以前に、
『浮舟』という曲が作られておりますので
区別する為についております。

歌詞は、源氏物語 宇治十帖の中の「浮舟」の物語を題材にしています。





<歌詞>

まれ(め)人の 心のかをり 忘れねど

色香もあやに咲く花の あだし匂ひにほだされて

包ましき名もたちばなや

小島が崎に誓ひてし

其浮船の行方さへ いざ白波の音すごき

身も宇治川の藻屑とは なりもはてなで世の中の

夢の渡りの浮橋を たどりながらもちぎりはあれど

すずしき道に入れんとて 現にかへす小野の山里



「宇治十帖」といいますと、

54帖あります源氏物語のうち、最後の10帖をいうのですが、

宇治を場面として書かれておりますので「宇治十帖」といいます。


「源氏物語」は、今や海外の方でも研究なさっている方がいらっしゃるほど
日本を代表する物語で

貴族の方も、絵巻を作って残すほど 愛読されていたのですね。


      

この、「源氏物語絵巻」は、2千円札の裏にも印刷されて話題になりました♪

江戸時代に作られたこの曲の歌詞も、

当時の人が読んでいるであろうことを前提に

歌詞では単語を織り込む形で書かれています(*^。^*)


まめ人=薫大将
色香も…匂ひに=匂宮
たちばな 小島=ひそかな逢瀬をした小島

といった様に書かれています。

浮舟は 薫と匂宮の板挟みに合い、悩んだ末に宇治川に身を投げようとして
果たせず横たわっているところを
僧に助けられ、仏門に入るのですが、

その宇治川の流れを手事という、

歌のない部分の合奏で表現しているとされています。
     


三絃は、物語の雰囲気が伝わる、

透明感がある音色の「二上がり」の調子で最初から最後まで弾きます♪


さて、宇治といえば

10円玉の裏にもあります、

宇治平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩をご存じの方も多いことと思います。



箏、笙、琵琶、鼓…様々な楽器を持っています。

他にも、舞を踊っていたり、歌っていたり…

その表情は皆穏やかで、

さぞかし豊かな合奏が…と音色を想像してしまいます(^。^)♪♪