2011年5月28日土曜日

中学校の邦楽授業の実際 ②

この「邦楽 豊学♪」で書いております13弦の筝(琴)は、

中国からもたらされ、雅楽で用いられていたのがルーツです♪

さて、その大きさですが、

雅楽の筝の初めのうちは、5尺5寸(約167cm)でした。
         ↓
嵯峨天皇(在位809~842)の頃に 1尺(約30.3cm)長くなりました。
         ↓
その後6尺4寸(約194cm)となりました。


*正式の大きさですよ、というのを表すのに、「本間(ほんけん)」という言い方があります。

生田流の筝は、京都で使われていた筝を本間として、

6尺3寸(約191cm)だったのですが、

山田流の本間である、6尺(182cm)の筝が、

「音が大きく出る様に改良されている」といった理由から、

生田流でも使い始め、

現在では、こちらが一般的になりました。






近年、学校の音楽の授業で、筝を弾く時間が設けられる様になりました。

長い筝を保管するのが難しく、

授業では保管に便利なケース入りの短い筝を使用しています。

今回触れることができたのは

浜松市にある「鈴木楽器製作所」が作りました

ちどり」というタイプの筝です

前回のコラムの最後にあった写真のものです




            



長さは122cm(約4尺)ですので、
通常の写真の筝の2/3の長さです。


<普通の筝との一番の違い>

①調弦の仕方

★(富士喜会で日頃弾いております)一般的な筝は、
琴柱(ことじ)を動かして調弦します

☆「ちどり」は、琴柱を印のついた個所に立て、
 横についたチューニングピンをハンドルで調節して、
 弦の張力を変えて調弦します。

この箏を平調子に調弦するのには
慣れていないこともあり
相当時間がかかりました。


    
     
















<箏柱の下にある白い点がしるしです>

児童(生徒)が自分で琴柱を立てて弾くことが出来る、
切れた糸を新しい糸に変えやすい、
というのを考えますと、このような構造に行き着くのでしょう。


②複数の面数を用意するとき

☆「ちどり」の場合、
一面毎にチューナーとハンドルで合わせて、
全ての面数が同じ音になる様に調弦するのですが、

★一般的な筝の場合、
たとえば10面を同じ調弦にする場合、
まず、一面目(種箏とします)を丁寧に調弦して、
一人の人が「種箏」の一から順番に弾いて、
もう一人の人が「筝2」の琴柱を動かして、
「種箏」と同じ音が出るように調弦します。
同様に「筝3……筝10」が、「種筝1」と同じ音が出るように調弦をしていきます(^.^)

丹精こめて調弦をいたしますと、どんなに面数が多くても、
澄んだ音色で、一つに聴こえるのです♪♪
不協和音のない音はまっすぐ歪まずに遠くまで聞こえます。


さて、短筝「ちどり」の弾き心地ですが、思っていたよりも音が大きく出ました(^^)
そして、勿論、
一般的な筝と同様、床に置いて弾いた方が弾きやすく、
メロディオンを弾く様に机においた状態では、
爪を当てるのが難しく、しっかり弾くことはできません。




長さの違いやら、日頃弾いている筝の桐の材質の違いもあり、
余韻などの響きの違いは感じるので、
是非是非、本当の長さの筝を間近で聴く機会が
皆様にあればなぁ~と思います(*^。^*)


この他にも、こんな事を試してみました♪
一をGでとって調弦することがあるのですが、
かなり琴柱の位置が下がり、
慣れてない方ですと、弦を押さえて半音や一音上げたり…というのが、本当に大変なのです(*_*)





写真は、一をGで調弦した低音の筝と、一をDでとった筝が並んでいるものです。

琴柱の位置を比べてみて下さい(^.^)




☆「ちどりの、どんな調弦でも琴柱の位置が変わらない、という特徴を生かして、

一をGの低音にまで弦を緩めることができるかと

ハンドルで調節してみたところ、無理なく調弦できました。

これなら、生田流の一をGでとる「六段の調」を少し弾いてみよう♪ とか、

同じメロディーを低音と高音で弾いて合奏しよう♪ とか、

可能性は広がりそうに感じました♪♪


もっともっと弾いてみたい o(^^)o

そんな子たちが増えるといいな…と思います♪♪♪

2011年5月25日水曜日

中学校の邦楽授業の実際 ①

文化庁のHPでこんな記事をみつけました。


伝統音楽普及促進支援事業

三味線音楽や箏曲などの我が国で古くから人々に親しまれてきた
伝統音楽は,今や継承することが危機的な状況になっています。
このままでは,気がついたときには消滅している可能性もあります。
それを防ぐには,次代を担う子供たちが,
学校の授業の中で伝統音楽に触れ,
将来の伝承者や理解者に育っていく環境を醸成していくことが必要です。
学習指導要領の改訂により,音楽の授業で扱う伝統音楽が充実されました。
これを契機に,学校教育において伝統音楽を効果的に扱うためには
どうしたらよいのか,
実演家,教員,さらには支える人たち(調整者)が協働して,
伝統音楽の素晴らしさを子供たちに教えていく仕組みが形成されることを目指しています。

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実際、邦楽にたずさわり、半世紀近く・・、
尺八はじめ、お箏や三絃を習う人口が減っているのは
実感するところです。
上記のいうところでは実演家=となる私たちですが、
文化庁からもこのような支援事業が発表されるのは
うれしいことです。
どうか、これらが有効に発動し、
結果がでますように、
このコラムが微力ながらでも役にたてないかと
願う次第です。

自分が箏や三絃にかかわり
かけがえのないものと出会ったという実感が増せば増すほど
これからの、新しい人たち、子供たちに、
邦楽の本当のよさを伝えていきたい、との気持ちが増しています。

「3年間で一種類以上の和楽器に触れさせること」と、
学習指導要領に盛り込まれているその和楽器ですが
それように用意された特別サイズのお箏です。




下が通常私たちが演奏しているものです。
短くなってしまった理由にはいろいろあるようですが、
弾き心地、調弦、その他
次回にまた~。