2011年1月31日月曜日

⑲三絃のお話

邦楽♪豊学のこのコラムも19回目となりました。

10月25日番外編⑦⑧で載せました
三絃(三味線)と尺八、鼓による
富士喜会の演奏『八千代獅子
お聞きになった方もいらっしゃると思いますが、
その三絃のお話を、
今回から、
楽器の伝来や構造、弾き方などなどを
曲の紹介を交えつつ進めていきたいと思います。


三絃と箏は、別々のジャンルだったのですが、
1688年頃から交流し始めまして、
もともと三絃の曲だった物に、
合奏できる様に箏の手が作られていきました♪

箏は、奈良時代には中国(唐)から伝来しておりましたが、
三絃(三味線)が伝来したのは
かなり後になります☆


中国には「元」の時代より
「三弦(サンシュン)」という楽器が存在していました♪         ↓
14世紀末、
琉球に伝来します。
現在でも沖縄で使用されている「サンシン」と呼ばれている物で、

「サンシン」は、中国から伝来してから
形状は ほぼ一緒のまま
今でも使われています♪
          ↓
1558~1569年に大阪の堺港に入り、
本土に三味線が伝わりました☆
  (初めて見た方達は驚いたことでしょう(^O^))

本土に入って来た時には、
蛇の皮が胴を包む様に張られており、
胴も丸いものでした。


 



















本土に入り、
胴が四角になり、大きくなったので
蛇皮ではなく、犬や猫の皮を
木の枠の表と裏に張る様になりました♪♪
(本土では蛇を捕るのが難しい、という説もあります)









呼び名も「サミセン」「シャミセン」となりました♪
胴の写真を見ていただきたいのですが、
弦は絹糸で
太さの違う3本の糸をかけます。

右側にあります、
小さく細長い物は、
「駒」と言いまして、
箏でいう琴柱(ことじ)の役割をしています


さて、三味線を最初に手にしたのは
「琵琶法師」でしたので、
琵琶の時に用いられる形に似た撥で弾かれる様になりました。
中国でも、琉球でも、撥ではなく、
義爪(ぎそう)か指頭で演奏していました。

初めに手にしたのが、
琵琶法師だった、というのは
偶然?なのでしょうけれど、
もし、琵琶法師が手にしなかったら…と想像は膨らみます(^_^)










写真は、現在、私が使っております地歌の撥です。


三味線は、本土に伝わってから、
あっという間に広がり、
様々な細かいジャンルが生まれ、
撥の形もジャンルにより変化しました。




三味線は、他の弦楽器と同じ様に、
糸巻きの部分で調弦して

長い木の部分の「棹」(ギターやチェロなどでは「ネック」)
の部分のツボを指で押さえながら

撥で弾いて音を出すのです。

2011年1月19日水曜日

⑱邦楽の音階について

前回、
箏(琴)の調弦の基本の調子となる

「平調子」の音色を聴いていただきました♪


聴いていただいて、
強く弾いていた音
弱く弾いていた音にお気づきになったことと思います。


今回は、<邦楽の音階について>です♪♪


基本となる音階の考え方は、
中国の音楽理論を応用したものです。


日本に伝来して、
音階名はそのままですが、

考え方は少し変化しております☆


さて、
邦楽の音階は、

「陰旋律(いんせんりつ)」と

「陽旋律(ようせんりつ)」

に大きく別けられます。

私が勉強しております、箏や三絃は「陰旋律」です♪

「陽旋律」は地方に多く、
民謡などの旋律として使われております。


↑どちらにしても、
日本音楽の音階は

統べて五音音階なのです♪


「五音音階の名称」は、

それぞれ
「宮(きゅう)」、「商(しょう)」、「角(かく)」、「徴(ち)」、「羽(う)」
といいます。


五音音階の特徴は、

陰性の音色を
メロディーの中に折り込んでいるところにあるのですが、


「宮(きゅう)」 陽性  主音

「商(しょう)」 陰性 

「角(かく)」   陽性 補音

「徴(ち)」     陽性  副主音

「羽(う)」     陰性  


★陰性の音は弱く弾きます


前回 聴いていただきました、

「平調子」は、
弦を弾いた順から数えて
五番目の音から
「宮・商・角・徴・羽」の音階をとりますので、

六番目、九番目 が陰性の音で弱く弾きます(^^)


オクターブの関係を考えますので、
四番目、六番目、九番目、十一番目(斗)が

陰性となるので弱く弾いているのです(^0^)/


その時の曲の調子によって、

どの弦から五音音階をとるかが
変化しますので、

音の陰陽も変わり、
弾く時の強弱も変わるのです♪♪

もう少し詳しく書きますと

音階の上行するとき(「羽」から「宮」へ弾くとき)
また、下行するとき(「宮から「羽」へ弾くとき)
それぞれで、「羽」音が変化する法則もあります

それは
作曲者の曲想によって、
軽快な感じ、または
奥ゆかしい深みのある味わいを
表現するのに使われるのです。

とくに、陰性の音は
音の表情を表現する大切な役目を持っています。

ここまでくると
音の色合いを表現する奏法を
意識する・・といった、言い回しになってきて
学べば学ぶほど、奥が深く
一言では、説明しきれません。

井上江雲先生がいつもおっしゃってた言葉

流派を超えて

「美しく弾くこと」

これに尽きるのかもしれません。

2011年1月12日水曜日

⑰平調子に調弦する方法

前回、
⑯一越(D)のお話を書きました。

そこで、今回は、
「一をDで平調子に調弦する方法」を書いていきます♪


箏という楽器は、

弦に琴柱(ことじ)をかけ、
琴柱を動かして調弦する楽器です


「平調子」というのは、
箏の基本となる調子なのですが、

一から順に弾いた音を聴いているだけでも
とても心地よい調子です(^0^)/



箏の調弦は、純正律

~自然倍音に基づく純正な音程なので、
美しい響きが得られます


♪「平調子」の調弦法です
(一をD=尺八のロ)

① 調子笛などでDを、
尺八でロの音を出していただいて

その音と一の弦を合わす。

② 一、二の弦を中指で弾き、完全5度に合わす。

③ 一と三を同時に弾き、響きを確かめて
完全4度に合わす。

④ 四と三を弾きながら、半音に合わせる。
古曲の場合は、やや低め。
近代以降のは平均律の半音と同じ。

⑤ 一と五を同時に弾いて、同じ音に。

⑥ 六、五を弾いて半音に。
 ④の場合と同じく、古曲の場合は低め。


⑦ 七から後は、二と七、三と八、
四と九、五と十、六と斗、
七と為、八と巾を
それぞれ同時に弾いて、1オクターブに合わせます♪


すると、琴柱はこの様な位置になります☆
 



いつもは、
体で覚えて自然に行っている動作を
言葉で書くのは難しいですし、

どの様な音になるのかも想像するのが難しいと思いまして、

師匠に平調子を弾いていただきました(^0^)/


一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、斗(と)、為(い)、巾(きん)

と順に弾いています♪♪

四、九 と 六、斗を低めに弾くと、

特に古曲を弾く時には

三絃(三味線)との合奏とも音が合いますし、

曲も しっとりとしたものになるのです。



2011年1月11日火曜日

平調子ー動画ー


一の音(糸)を D にして

師匠に、平調子を弾いてもらいました。

音によって、強弱も決まっています。

今日は番外編です。

2011年1月5日水曜日

⑯除夜の鐘と 壱越(D)のお話


お箏と三絃の調弦をする際、
調子笛で、Dの音を基本にする場合が多いのですが、
今日はその D の音 のお話です。

      *******************

大晦日から 「除夜の鐘」を聴きつつ、
新年を迎えた方もいらっしゃると思います(^_^)/
梵鐘の いつまでも続く余韻を聴いていると
今年は こんな一年だったなぁ…
そして 「あぁ、一年こうありたいなぁ~」と、
日付が変わり、新年を迎えた時刻に
鐘の音を聴くとしみじみ思うのですが、


あの、大きなお寺の鐘(梵鐘)は

「壱越(いちこつ)」という高さの音がする様に作られるのが基本です☆


    





「壱越」というのは、英米音名、ドイツ音名で言いますと「D」にあたります。
そして、読経をしながら打ち鳴らす
「キン(磬)」も
壱越の高さに音が鳴る様に作られています。



この、「キン」は、
読経の声の高さの目安の為の「音叉」の役割と、
叩く速さで、読経のの速さを表しているとのこと。


さて、
筝(琴)や三絃(三味線)の調弦をする際に、
調子笛を使って 「一を壱越の音の高さにして…」
という曲は多いのです。


    
上記は、『七小町』という曲の楽譜の一部です。

ここには、「こうやって調弦する」ということが書かれているのですが、


三絃の「一の糸」
=尺八の「ロ」
=筝の「一」 となるように調弦する、
と書かれているのです。
(※都山、琴古と書かれているのが尺八です)

尺八の「ロ」は、壱越の高さなので、
三絃の一の糸も、筝の一も壱越の高さにして
調弦してくださいと書かれているのです。


どうして壱越(D)を基本として調弦するのか
もともと、琴も三絃も中国由来だからかしら~?

と文献をあたったのですが、
明確な理由には出会えませんでした(+_+)


歴史を見ると、僧の方とも関わりがあるので、
梵鐘やキンの音、読経の声の高さに秘密がある様な(^^)
心に響く音が、壱越(D)だったのかもしれないし、
心地よく感じる音が壱越だったのかもしれません♪♪

除夜の鐘の後は、正月の獅子舞を堪能したいです~(*^。^*)
このコラムでもご紹介いたしました『八千代獅子』
お正月はとくに、お店などでも耳にいたしますね♪

この曲は、歌のない部分が先に作られて、
後から歌がついたという説があるのですが、

「後唄」という、終わりの方に出てくる歌は

 ♪ 雪ぞかかれる 松の二葉に

   雪ぞかかれる 松のふたばに
 
という、今の時期の景色にぴったりな歌詞なのです☆